【さ】最近ちまたでは5レーンという言葉が流行っています。自分もよくブログではその理論を使いながら説明したりしますが、サッカーをよく知らないかたからすれば「なんじゃこりゃ?」となるのが普通かなと思います。なので、今回はそんな5レーン理論がなぜ重要視されるのかということを書いていきたいと思います。ではでは。

~ポジショナルプレーと5レーン~

今現在のサッカーでは個人の技術による質的優位、枚数で優位を得る数的優位などがありますが、配置的優位の面も非常に重要視されています。詳しく書くと、選手のポジショニングによって優位に立つといういわばポジショナルプレーと言われるものです。

例えば、この図のようにSBから相手の(2列目と3列目の)中間ポジションにいるIHに縦パスが出たとします。

すると2人だけでのパス交換なのに、赤のIHにボールが入れば図のように青の選手を6人も置き去りにすることができます。6人も置き去りにすれば、残る後ろの青の選手はDF4枚とGKの5枚だけになります。このように、ポジショニングによって自分たちにとって優位にもっていくプレーをポジショナルプレーと言います。

ポジショナルプレーの目指すものは、ポジショニングによる配置的優位で攻撃も守備もやりやすい環境を作ることです。いわゆる効率化です。さっき書いた例も点を奪いやすくするための手段なわけです。

しかし、そんなポジショナルプレーを目指そうとしても、さっきの図の例で言えば、「相手の中間ポジションをとれ!」と言われただけでは簡単にはできないわけです。「中間ポジション」というだけではかなり抽象的ですし、センスに任せるしかありません。中間でポジショニングしても、位置が悪くてボールうけらんねぇじゃんとかも起こりかねません。そんなことになれば、ポジショニングで優位をとりたいのに得られないという本末転倒な事態になります。5レーン理論というのは、それを解消するために生まれたと言っても良いのかもしれません。

~5レーンとは~

この理論は僕が調べた上ではドイツで生まれた理論だそうです。5レーンというのはピッチを縦に5分割することです。

従来はこの図にあるワイドとセンターで3分割するだけでした。ワイドには相手の守備が届きづらいというメリットがあり、センターはゴールに最短距離でいけるというメリットがありました。しかし、デメリットも同時にあり、ワイドはゴールから遠ざかってしまい、センターは相手がブロックを作って守備をしやすいというデメリットがありました。なので、「ワイドよりもゴールに近づけて、センターよりも相手が守備をしづらいゾーン」ということで、センターとワイドの間に「ハーフスペース」というものが生まれました。この5レーンを442の守備に当てはめるとこうなります。

するとこんな感じに。442に当てはめるとハーフスペースはSH、DM、SB、CBの中間ポジションに当てはまりやすいです。そのため、「二列目と三列目の中間のハーフスペースでボールを受けろ!」と言われれば、とるべきポジションが明確に伝わります。

こんな具合に。ハーフスペースだけではなく、「二列目と三列目の中間のセンターで受けろ!」となれば、DM、DM、CB、CBの間にポジショニングするなどなど。これらは1例ではありますが、このように5レーン理論というのは、選手がとるべきポジションを明確にして、ポジショナルプレーを手助けするための理論として用いられています。

補足として、今のサッカーの守備は横圧縮が必須とされていますが、それはハーフスペースという理論が生まれたためにそこのスペースをふさぐためです。ポジショナルプレーは攻撃だけではなく、守備でも優位を得ようという考え方があるので、5レーンは攻撃だけではなく、守備でも役立てることができます。トランジションという攻守の切り替えの場面でも。そういう面があるので、5レーンを頭に入れながらサッカーを見てみると色々な発見があるかもしれませんよ。

~5レーン理論の恐ろしさ~

サッカーはスペースを上手く使っていくことや、自分たちが持っている起きている優位性を生かしていくことが醍醐味でもあるスポーツです。今紹介している5レーンは意識しておくことで、どこにスペースができるのか、どんな優位が起きているのかということもわかりやすくなります。なので、その点について書いていきます。ここでは青が442のゾーンDF、赤が4141で攻撃するという仮定で書きます。これもあくまでも一例です。

さっきも書いたように中間のポジションをとって一発のパスで多くの相手を置き去りにできるように、赤の選手がポジショニングをします。こうなると青の選手は、特にハーフスペースにポジショニングする選手にボールがわたれば比較的ゴールに近い位置から進撃されてしまうのでどうにかしたい。

でも中間にポジショニングされてるためにSHが見るべきなのか、DMが見るべきなのか迷いが生まれてしまいます。これは配置的優位の利点とも言えるでしょう。迷い続けるままではそのまま縦パス通されて6人が置き去りにされてしまう。だから、ここに通させないためにどちらが見なければなりません。

では、仮にSHが見るとしましょう

すると、ワイドのレーンが空きやすくなって、ワイドのレーンにポジショニングする選手にボールがわたりやすくなります。そうなると、今度は青はSBが出てきますね。その結果、今度は青のSBCB間、つまりは青の最後尾のハーフスペースのところが空きやすくなり、そこからの進撃ができやすくなります。そうなれば、SBはハーフスペースを閉じるべきなのか、ワイドでボール持っている選手に当たりに行くべきなのかという、ここでもまた2択を迫られます。これも配置的優位の利点。これがパターン1。次はDMが見るパターン。

すると今度はセンターのレーンが空きやすくなるため、そこにポジショニングしてる選手にパスを出しやすくなります。ここはもう一枚のDMがスライドしてまずは埋めればいいのですが、そうなると、今度は逆サイドのワイドのレーンにいる選手にボールがわたりやすくなります。それでまたワイドのレーンの選手にわたれば、また青はSBが出て来てゴニョゴニョゴニョ…。

ってな具合に、5レーンを頭に入れておくと選手のポジショニングによって相手をどこのレーンに動かして、それによって今度はどこのレーンにスペースを作ることができるのかということも明確になるため、認知から実行までの流れもスムーズになりやすく、ポジショナルプレーの手助けになってくれます。これら配置的優位な考え方より、攻撃をスムーズに行えるようにしていく。ポジショナルな思考を養うためにも、5レーン理論を覚えることは重要性があることだと僕は思っています。

~ひとりごと

正直、僕はサッカーをやっていたためか、5レーンの理論を理解するのにはさほど苦労しませんでした。ですが、サッカーを見る人の中でこういう話に興味があっても、サッカーはやったことないよっていう人からしたらやはりわかりづらいのかもしれません。そういう方に伝えるというのはとても難しく、僕も苦労します。そういった方には歴史的背景からアプローチをかけていくという方法が一番いいのかもしれませんね。なにはともあれ、僕が書いたこの記事で5レーンの理論を理解できましたという方が増えてくれたら幸いです。

今回は以上です。

ほいじゃまた!