【さ】昨シーズンの7連勝はプレッシングの圧、ネガティブトランジションの質、カウンターからの得点による効果が大きく響いての結果でした。そして、ハイラインを極端なものにしなくしたことも、相手を陣地から出し抜いてカウンターを完結しやすくするという現象を生みました。

今シーズンスタート時のジェフは極端なハイラインに戻し、ポゼッションからの遅功メインとなりましたが、そうなると自分たちでスペースを作らないといけなくなります。今シーズンの結果は、そこが上手くいかずに苦労してしまっているからです。

前節の甲府戦もその遅功の部分で苦労した中で、終了間際にかろうじて追い付いての勝ち点1でした。今節はフクアリに戻っての岡山戦でしたが、それを改善できたのかどうか(毎回こればっか言ってる気がしますが…)。はたまた、別のアプローチで仕掛けるのか。ふりかえってみまっしょい。

~スタメン~

ジェフのスタメン、GK優也、茶島、近藤、増嶋、サリーナス、熊谷、ヤマト、矢田、船山、為田、指宿の11人。前節から4人を変更。茶島とサリーナスをSBに置いたのは、ビルドアップ時に安全にボールを運びたいという狙いがあったのでしょう。

岡山はGK一森、後藤、濱田、喜山、塚川、上田、椋原、武田、仲間、齋藤、赤嶺の11人。仲間、齋藤、赤嶺のトリデンテは非常に脅威。

~前半~

開始早々は岡山が勢いよく出てきたため、ジェフもロングボールを使って陣地取り合戦に参加。6分ごろになると、岡山のプレスが届きづらいSBのところからボール保持ができるように。前半は序盤からジェフがボールを握る展開となりました。

~ジェフのビルドアップと岡山の守備の基準点~

ジェフが4123の時のビルドアップはアンカーの熊谷がDFラインに落ちて3バック化してやるのがお決まりのようになっています。

3バック化によるビルドアップは大体は数的優位を作るための手段として使われますが、ジェフの場合はCBとCBの間をできるだけ空けたくないために3バック化をします。

岡山が採用している布陣は343。つまりはジェフが3バック化することで岡山は守備の基準点がハッキリします。

よって、岡山の前線の選手たちはポジションを可変させないでプレスに行けるため、スイッチが入れば前線から追いかけてきました。それに対してジェフはシンプルなロングボールを入れたり、ここも岡山のプレスが届きにくいSBのところから運んでいくシーンが目立ちました。

~茶島とサリーナスのSB起用の狙いとは~

343のデメリットとして、WBの前のところが空きやすいというのがあります。WBの前をシャドウの二人に任せようとすると、今度はファーストディフェンスが行けずに後ろが重くなります。なので、どちらのやり方で行くにしても多少のデメリットがあります。

岡山の343は状況によって541になることもありますが、基本的には523でファーストディフェンスはしっかり行かせるやり方を取っています。よって、WBの前のところが空きやすくなっていました。

WBの前が空きやすいということは、ジェフで言えばSBがボールを持つと時間を得やすくなります。よって、ジェフはSBのところからゲームを作ろうと考えます。

とはいえ、岡山としてもさすがにここをほったらかしにするわけにはいきません。前の3枚がプレスに行っているため、連動しないと意味がありません。なので、WBの前をどうするのかと言うと、基本的にはWBがそのまま縦スライドして対応するようにしていました。

すると、今度はそのWBの裏が空きやすくなります。ジェフがまず狙いにしたのはそのWBが縦スライドすることでできる裏のスペースでした。そこにWGやIHを走らせることでチャンスを狙おうというものでした。

しかし、岡山もその戦い方になれているのか、WBが釣りだされたあとの残りの4バックのスライドがとてもスムーズでした。よって、これによってジェフがチャンスを作れるシーンはありませんでした。

ただ、岡山にとって1つ誤算がありました。それは、ジェフのSBのポジショニングがあまりにも低いことと、WGが外に張るために、WBが縦スライドできないようになっていました。

SBの位置がここまで低いと、WBの縦スライドしなければならない距離が増えます。そのため、間に合わない可能性が高くなります。そこが間に合わなければプレスを回避される可能性も高くなります。それと、WGが外に開いてポジショニングするために、WBはその選手を置き去りにしてまでも縦スライドすることは難しくなります。スライドの距離が伸びて間に合わなければ、そのWGにフリーでボールを受けられてしまいますし。

そのため、岡山はSBについてはシャドウが見るシーンが前半中盤から増えて、前からのプレスを捨てざるをえない状況となります。

岡山がプレッシングに来れなくなった結果、ジェフが最終ラインでは自由にボールを持てるようになります。しかし、岡山は「プレッシングにいけないなら541で割りきって守備をしよう」という姿勢にシフトします。プレッシングに行けないわけですから、妥当な判断だと思います。そうなるとジェフは相手を押し込むことに成功はしたので、攻撃に枚数をかけたくなります。

茶島とサリーナスのSB起用は相手を押し込んだ時に圧力を加えたいという狙いがあったのかなと思います。プレッシングを受けたときに安定させながらビルドアップさせるためという理由もあると思いますが、相手を押し込んだ時の攻撃のクオリティを上げるための要員でもあったと思います。エスナイデルがここまでの状況を見込んでの采配なのかはわかりませんが、相手を押し込めるという自信が無きゃこのような采配はできないとは思います。エスナイデルは以前からSBやWBに「斜めに入っていけ!」と指示をしているのを見ると、SBやWBといったワイドのポジションの選手にもゴール付近でのプレーを求めているんだろうなと思います。実際に茶島とサリーナスがゴール付近まで行くシーンは少なかったですが、低い位置のビルドアップ時ではプレス回避をするなど活躍してくれたので、まあ結果オーライかなと思います。

相手を押し込むことに成功はしたジェフ。ただ、やはり最後の崩しの部分でまたも苦戦。ここだけは相変わらずだなという感じですが、チャンスを作れていないわけではありませんでした。相手のビルドアップでミスを誘って、ボールを奪ってのカウンターに持ち込めたからです。

~ラインの高さがもたらす因果関係~

前節の甲府戦も今までの極端なラインではなく、ボールの位置にあわせてラインの調整を行っていました。しかし、ファーストディフェンスを放棄したことで失点を食らってしまいました。

今節の岡山戦ではその甲府戦の反省を活かして、ディフェンスラインは調整するものの、高い位置からプレスをかけるようになっていました。

すると、岡山の選手がそのプレスに引っかかるシーンがちらほら。そこから奪ったシーンをジェフはチャンスまで繋げていました。

岡山の選手がプレスに引っかかるようになった要因はやはりディフェンスラインを調整して、極端に高いラインにしなくなったことが影響していると思います。

今まで極端に高いラインを敷いている時は、プレスがかかっていようがかかっていまいが、相手は「ハイラインの裏がある!」とラインの裏へ一発の長いボールを入れます。ラインの裏を一発を取られれば、攻撃してる側は最小人数での攻撃で済んでしまうので、相手を出し抜いてカウンターを発動するためのスペースを作ることができません。

なので、極端なハイラインをやらなくなるとその逆で、相手は「ラインの裏を一発で取れないから、人数をかけて攻撃するしかない」となり、攻撃に人数をかけるようになります。その結果、ジェフにとってはカウンターを発動するには十分なスペースが出来上がるわけです。

事実、前半から為田が奪ってチャンスを作ったり、船山が奪ってチャンスを作ったりと、ラインを調整することで岡山がラインの裏を狙えなくなったため、ジェフのプレスがハマりやすくなっていたと思います。

ただ、岡山も帰陣が速く、粘り強い守備を見せていたため点はお互いに生まれず。前半は0-0で終了し、後半へ折り返します。

~後半~

後半スタート時での交代はありませんでした。お互いに前半と同じメンバーで後半をスタートしました。

岡山は前半の反省からから、WBが縦スライドをしてジェフのSBのところまでプレスをかけてきました。そして、前への圧力を強くして、攻撃に人数をかけようとします。

しかし、逆にジェフとしてはスペースを与えてくれることとなります。すると、56分、ジェフがカウンターから先制します。岡山が前へ人数をかけたところ、ミスからジェフがカウンターへ移行。岡山の上がっていたWBの裏から船山が抜け出して、クロス。それが弾かれ、船山がもう一度クロスを上げたところ、それがミスキックになり、なんとゴールイン。岡山は不運とはいえ、ジェフが狙っていたカウンターから先制点を奪います。

先制点を奪われた岡山は依然点を取りに前へいこうとしますが、67分に濱田が退場に。追いかけなければならない岡山が10人となってしまいます。

岡山は75分にリカルドサントスを入れてわかりやすくPPに行くものの、リカルドサントスはそこまで空中戦が強いわけではないので、ボールはさほど収めることができず。逆にジェフは為田に代えてエベルトを入れて3バックに変更。試合を終わらせにかかります。

そして、後半終盤、岡山のコーナーキック、一森もゴール前まで上げた岡山。そのコーナーキックも防いで試合終了。ホームでは強さを見せるジェフが2位の岡山に1-0で勝利しました。

~最後に~

町田戦の3点のうちの2点もそうだったのですが、やはりこの試合もカウンターからの流れでゴールを奪いました。今のジェフは相手を押し込んで、自分たちでスペースを作りながら…というよりは、相手を出し抜いて、カウンターからゴールを奪う方が効率がいいのかなと思います。船山、為田、ヤマト、ラリベイなどスペースを与えれば脅威になれる選手を山ほど抱えているので、効率よくスペースを作るにはどのやり方をするのがいいのかなと考えると、やはりこの試合のやり方がまず1つだなと思います。ここから先、このやり方を継続していくのか、はたまたまた遅功をメインにしてそれの向上を目指すのか。どちらをベースにするのか、今後注視していきたいなと思います。

今回は以上です。

ほいじゃまた!